林 世峻(リン・シチュン)
事業推進本部 技術部 主任
台湾から日本へ。
本格的な地質研究を求めて
事業推進本部 技術部 課長
北條 豊 Yutaka Hojo
VOICE
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1993年に入社し、今年でちょうど30年目です。
大学では地理学を専攻しており、山や河川の地形、その成り立ちを研究していました。
だから地盤試験所の仕事で、全国の多様な土地を調査できるのは、私にとっての魅力です。
実は大学時代、旅行会社に入ろうと思っていた時期もあるんです。
さまざまな土地を訪ねるのが好きで、国内旅行業務の資格も取得したのですが、ある先輩から「君は営業には向いていない」と言われまして……(笑)。
同じく興味を持っていた地質業界を調べているときに、当時の地盤試験所が掲げていた「あなたの足元、大丈夫ですか?」というキャッチフレーズに出会い、痺れたものです。
無事、当社に内定をもらって、入社前の2月からアルバイトもさせてもらいました。
しょっぱなから新潟出張に行って、大好きなおいしいお酒にもどっぶり浸かり、気づけば30年が経っていたという感じです。
入社以来、多くの仕事に関わってきました。
最初は計測部で動的載荷試験をやり、2000年からは調査部で地質調査を。プログラミングを専門的にやっていた期間もあります。
コードを書くのは初めてだったので、2年間くらい社内に缶詰めで学びました。
社内の見積もり作成や、取得したデータの整理・解析をするのですが、ちょうどアナログからデジタルに移行する時代と重なって、新しいことに挑戦するのは楽しかったです。
高速道路をつくるために、1年間、夜勤仕事を続けたこともありました。
振り返ると、自分からいろいろなことに首を突っ込んできたなと思います。
ときには無茶ぶり案件もありましたが、「さて、どうするか……」と悩みながら考えるのが性に合っていて、好きなんですよね。
2年前から、新しく設立された技術部で仕事をしています。
ここ10年ほど地質調査に携わってきましたが、私が主に注力しているのは、地盤調査におけるCPT調査です。
調べたい地盤に杭を打ち込み、その強度を調べる載荷試験とは異なり、直接的に土を調べるのが地質調査。なかでもCPT調査は、地盤試験所の強みといえるでしょう。
CPT調査自体は精度が高く、国際的にも広く採用されている標準調査方法です。しかし残念ながら、日本ではいまだ一般的とはいえません。
30年前に初めて日本で導入された際、ヨーロッパとは異なる日本の固い地層を前に、CPT調査は向かないと判断されてしまった経緯もあります。
今となればそれは早計で、日本の地盤でもCPT調査は可能ですし、むしろ微細な情報もしっかり取得できるため、利点が大きいことは間違いない。
その点、地盤試験所では、CPT調査が業界では受け入れられなかった時代から、先代社長の旗振りでコツコツと知見を集積してきた実績があります。
その結果、最近では「CPT調査をやりたい」というリクエストも増えてきました。
現在、日本ではまだ、より安易で安価な調査方法が主流となっています。
しかし天災も多い日本だからこそ、より精度の高いCPT調査を日本の建設現場で主流としていく必要があると、当社では考えているのです。
近年、ものすごい勢いで拡大している洋上風力発電施設の建設においても、CPT調査は必要不可欠だといえるでしょう。洋上風力発電自体がヨーロッパ主導の技術ですから、地質調査に関しても、世界標準であるCPT調査が義務づけられているからです。
とはいえ、日本はCPT調査技術が、およそ50年遅れているといわれています。
国内では、ほぼ地盤試験所だけが、世界標準レベルのCPT調査技術を持っているといっても過言ではありません。
今後も地道に、CPT調査の普及活動を行うことも、当社の使命です。
地盤試験所と歩みをともにする「CPT技術協会」からは、CPT調査の基本的理論や歴史、実務応用に向けた教本を、2024年に刊行する予定です。
もう1つ、私個人の小さな目標としては、年齢に応じた成長をしていきたい。
これまでは社内外で、自分より年長の先輩方に目をかけてきていただきましたが、気づけばもう「かわいがられる」年齢ではなくなってしまいました(笑)。
今度は自分自身が若手に声をかけ、社外のネットワークとも積極的につなげていくなど、コミュニケーションも心がけていきたいです。
私たちの仕事は、“土”相手です。
土は生もの。どんなにこちらが学術的、論理的に武装しても、結局は出たとこ勝負で、やってみないとわからないドキドキ感があります。
でも、それは“人”相手でも同じだと思うんです。
多様な人間たちが集まって、1つのチームをつくりあげる。ともに現場で働き、希少な事例に遭遇したときには、「ああでもない、こうでもない」と頭を突き合わせながら挑戦していく。
そんな大地からの「無茶ぶり」を受けた瞬間に、「ああ、この仕事って楽しいな」と感じるんです。